・この頁ではショウに寄せられた感想等をご紹介しています。
・公開している内容は頂いたお気持ちを大切にしたいので
こちらでは一切訂正なしで掲載させて頂いております。
2007年
2007.3.24@池袋サイバー
東京都 眞夕様
2007.2.11(日)
芝浦Studio Cube 326
”Alamode Night”26
東京都 森美樹様
『エバミルククラウン』
「ロウズとギグルス」。今宵、彼等を観た時、私の頭の中にミルク・クラウンが浮かんだ。
グラスにそそいだミルクに、ミルクを一滴たらした瞬間にできるあれだ。誰もが里香の授業で目にしているだろう。白く、穢れなく、そして実在しない、まぶたの裏で永遠に生きる冠だ。
彼等に天才という言葉はあてはまらない。奇才であり、異彩を放っているといった方が正しい。彼等は、自分達のステージを作るのではなく、空間を塗り変えるのである。故に、どんな場所であろうと、たとえ野外であろうと、無関係だ。彼等は、空間すべて、時間ごと、そこにいる人々をも飲み込んで、意空間にしてしまうのだから。
私は芝浦の、あまり美しいとはいえない、川べりの道を歩いていた。薄墨のような夜の中、ひとりで、閑散としたアスファルトを靴で鳴らし、会場に向かっていた。
「今日で何度目だろう。ショウを観るのは」
などと考え、
「ああ、初めてだ」と思う。そう、何度か、何度も、観ているのだが、いつでも「初めて」なのだった。
まるで憧れの恋みたいに。
いつでも初めての気持ちだったらいいのに。と、いつしか恋をするたびに思っていた。逆行に照らされた貴方の髪に輪ができていて、「ああ、私だけに見えるミルク・クラウン」と思っていたように、
そういう気持ちを永遠にしたいと、永遠に思えるように。
「ロウズとギグルス」。彼等は、初めてという永遠を知っている。
とどめておきたい、とどめておけない、という矛盾を、形に出来る唯一無二のユニットだと言っていい。
私だけでなく、彼等を観に来るお客様は皆そう思っているに違いない。
バンドによってはお客様の間で妙な派閥があったりして険悪なムードだったりするのに、彼等のショウで私は不快な思いをしたことがまったくない。かといって友人をつくるでもないのだが、皆が皆、視線で通じ合っているというか、とにかく気分がいい。舞踏会に招かれている貴族といった風に、それぞれがエレガントで、かつ個性的だ。ショウが始まる前も、フロア狭しと踊りまくっている。
ショウが始まるまで、私の心臓は柱時計のように揺れる。心地よく揺れ、ちょうど揺れがおさまる頃に、絶妙にショウが始まる。
客席から、足取りもかろやかに現れるギグルス。彼のステップは雲を踏むようで、まるで人というものを感じさせない。
ステージの上、薔薇の花と戯れるロウズ。花畑をそのまま縫い付けたようなドレス、舞い散る金箔、プリマヴェーラそのものといったいでたちだ。
騎士然としたギグルスとロウズ姫は愛し合う。オペレッタのように。
後ろで、カエルの魔王に扮した駄目バレリーナがほくそ笑む。たちまち、暗黒に突き落とされるふたり。愛はあっけなく引き裂かれ、レイプされてしまう姫。泣き叫ぶ騎士。
私は最前列のまんなかで、膝を抱えてふたりの恋物語を見守っていた。
金と赤と美と醜でできた、永遠の恋物語に酔っていた。
以前、ギグルス様に尋ねたことがある。
「ダンスや舞踏を勉強されていたのですか」と。
「いいえ」にっこり笑ってギグルス様は言った。「何もやっていません」。
愚問だった、と私は苦笑した。習う必要がないのだ。彼はもう、ダンスや舞踏そのものなのだから。
以前、ロウズ様に尋ねたことがある。
「綿密にシナリオを練って、リハーサルも重ねているのでしょう?」と。
「いいえ」にっこり微笑んでロウズ様は言った。
「軽く説明はしますけど、基本的には好きに動いてもらっています。」
愚問なのだ、と私はまたもや苦笑した。天然だから、ここまでうまくいくのだ。
「ロウズとギグルス」それにエキストラ達、お互いがお互いを信用し、尊重しているからこそ、空間を作り上げることが出来るのだ。時間、人種、あらゆる境界線をとっぱらった、狭くて広い、明るくて暗い、暗くて明るい、たとえていうならば、まぶたの裏の輝かしい世界を、作り上げることが出来るのだ。
まぶたの裏に、永遠の憧れの恋を形にした、ミルク・クラウンがある。
今回のステージは、特別に恋を感じさせてくれた。初めてという、永遠の恋。
でも、彼等にミルクをあてはめるには、いささか毒が足りない。
帰り道、あまり美しいとはいえない、川べりの道を歩きながら思った。墨汁のような夜の中、ひとりで、へたくそなダンスを踊るように、靴でアスファルトを鳴らしながら。
毒と甘さが足りない。ならば、エバミルクの冠はどうだろう?と。
エバミルクでできた冠だったら、とけたお砂糖で冠は頭にぺたりとくっついたままだろうと。
私は真面目に考えていた。
今宵のロウズ姫には、エバミルク・クラウンをかぶせたい。
ミルクtごお砂砂糖と少しの添加物とでできた冠なら、離れることはない。
ギグルス騎士との恋も永遠だ。たとえ魔法をかけられたrとしても、大丈夫。めでたし、めでたし。
私は、本気で考え、自ら出した結論「ハッピーエンド」に満足していた。
次はどんな「初めての永遠」を魅せてくれるのだろう。
私の胸は、高鳴るばかりなのだ。